情報を保護する技術の1つである暗号は、もはや安全な通信においてなくてはならないものになっています。元々、軍事的な目的を達成するがための秘密通信を行うために生み出され、より安全性の高い暗号アルゴリズムが設計され、実現されてきました。現在では、インターネット上で安全に情報をやり取りできるために、暗号技術が適切に組み合わされて大きなプロトコルスイートが確立され、重要なミドルウェアとして活躍しています。
暗号技術は、一般的に代数学をもとに構成されています。そのため、当然ながら暗号鍵が大きくなれば安全性は増加しますが、代数計算の負荷が大きくなります。このため、保護する情報のレベルや通信・計算機の環境を考慮した上で、適切な暗号が選択される必要があります。例えば、100円の情報を保護するために、100億円の価値をかける暗号システムは必要でしょうか?これは極端な例かもしれませんが、暗号は難しく強力なものにすることは可能ですが、コンピュータの計算環境や運用コストを無視したままでは、継続して安全な通信が今後も保証されていくとは言えないかもしれません。
そこで、私たちの研究室では、今後益々普及していくと考えられる小型の計算機や携帯電話、組み込みシステムなど、計算能力やメモリ、電力が制約された環境で動作するような、最適化されつつ安全性が保証された暗号アルゴリズムについて研究を進めています。
研究課題
いまやRSA暗号を筆頭とする公開鍵暗号はインターネットには必須なものです。しかしながら、安全性を高めていくためには鍵長の大きさをより大きなものにする必要があるため、環境によっては計算負荷の影響を無視できなくなることも考えられます。そこで、楕円曲線上の離散対数問題に着目した楕円曲線暗号と呼ばれる研究が数年前から盛んになり、我々においては、その高速な処理が行える土台を実現することを目指し、その具体例として、GPGPUおよびFPGA上において効率よいアルゴリズムを創出する研究を進めています。