修士/博士論文

運行情報と気象情報の畳み込みによる
バス到着時刻予測手法の提案と評価

現代の生活のおいて、公共交通機関は欠かすことのできない存在となっており、通勤や通学など様々な用途で利用されています. また、公共交通機関において利便性が利用者の利用意欲に直接的な影響を与えていることが過去の研究で明らかになっています. 路線バスの利便性を向上させる方法の1つとして利用者への到着時刻予測の提供が挙げられます. 既に様々な方法で提供が行われていますが、特に路線バスにおいては様々な要因が複雑に関与しているため正確な予測は非常に難しいとされています. また近年の路線バスの到着時刻予測において、線形回帰などの手法では扱うことができない長期間の時系列の特徴を扱うことができるLSTMが注目されています.

研究課題

LSTMを用いた手法の拡張として重み演算に畳み込み演算を用いたConvolutional LSTMを用いた手法が提案されています. しかし、この手法には大きく2つの問題点があります. まず時刻表が存在せず、一定間隔の頻度で走行する路線を対象に評価を行っているため早着によるバス停での意図的な停車など、時刻表ベース特有の特徴が考慮されていない点、次に雨などの天候の影響によって運行が乱れた際に予測精度が大きく低下する点が挙げられます. 本研究ではこれらの問題点を解決するために気象データと過去の運行データをConvolutional LSTMを用いて同時に畳み込み、走行時間と停車時間を別々のモデルで予測する手法を提案しています. 兵庫県神戸市内のバス路線の1週間を対象にConvolutional LSTMを用いた既存研究と予測精度の比較を行った結果、1週間全体で見ると、1.36%の平均絶対パーセント誤差の減少が見られました. 特に夕方の時間帯や、雨天時に運行が大きく乱れた場合には、約3%と1週間全体と比べて平均絶対パーセント誤差を大きく減少することができました.

Publication

  • 石長 篤人, 新井 イスマイル, 垣内 正年 and 藤川 和利, "運行情報と気象情報の畳み込みによるバス到着時刻予測手法," 研究報告高度交通システムとスマートコミュニティ(ITS), 情報処理学会, vol.2021-ITS-84, no.6, pp1 -8, 2021年3月4日