IoT(Internet of Things)という言葉も出ている通り、無線ネットワーク技術の発展やデバイスの低価格化によって、センサやアクチュエータを街中や家内にばらまいて常時稼働・接続できる環境が整ってきました。
いかに人々がコンピュータを意識せずとも生活を安心・安全・豊かにする環境を構築できるかはセンサネットワーク技術の発展にかかってます。
またビックデータという言葉がありますが、大量のデータが発生し続ける状態で、意味のある情報を抽出したり、その抽出作業の負荷が一部に集中しないシステム設計も重要な課題です。
環境センシング
街中や建物にセンサを配備して、目的に応じたデータの加工をして情報サービスを提供します。 センサの出力する生データがそのまま目的に合うことがほとんどですが、まだ目的を満たすセンサがない場合に既存のセンサ値を解析したり、複合したりすることで目的の情報を見出す必要があります。
我々はこれまでに、街中の人流を計測するために通行者のスマートフォンから発せられるWi-Fiビーコン情報を収集しておおよその人の流れを把握するシステムや、デジタル百葉箱を設置して気象データを収集しながら、それらのデータから意味のある情報へ昇華させるデータマイニングの研究開発に取り組んでいます。
また、今後は公共交通ビッグデータ解析プロジェクトの研究基盤を活用して路線バスによる街中の巡回センシングを予定しています。
参加型センシング
街中にセンサをばら撒ける時代になったとはいえ、機材コストや設置コストはセンサの量に比例するので、得られる結果が予測できないものに投資する覚悟が必要です。 一方で、大量のセンサを搭載したスマートフォンが普及したため、スマートフォンユーザに協力してもらって低コストに広範囲のセンサデータを収集できる可能性も上がっています。 一般ユーザが所有するスマートフォンの種類や計測条件は多様なため、集まるデータはノイズだらけです。 集まったセンサデータからノイズを除去し、いかに役立つ情報を得るかが研究のポイントになります。
我々はこれまでにスマートフォンの照度センサ(画面の明るさ調整が主目的で搭載されている)に着目して、夜道の明るさを可視化する参加型センシングシステムを開発しています。
ライフロギング
自分のためだけにビッグデータを取り扱うサービスが現れています。
例えば、持ち歩いている加速度センサーを常時ロギングして歩数や消費カロリーを自動算出するといったものです。
クラウドサービスの低価格化により自宅に常時オンラインのPCを用意しなくてもスマートフォン等を通じて意識せずにセンシング・ロギングできる時代になりました。
MEMS (Micro Electro Mechanical Systems)技術の発展により省電力で身につけやすいセンサ等のデバイスの種類がどんどん増えていますので、これらを活用した生活支援等のサービスを提案しています。
我々はこれまでに、スマートフォン搭載センサの情報をもれなくサーバにアップロードし、ユーザの状態を推定するシステムを開発してきました。 最近はスマートウォッチや心拍計等、様々なウェアラブルデバイスが市販されるようになってきたので、それらのデータの使い道について色々と提案・検証していきます。
研究業績
- Toyokazu Akiyama, Yukiko Kawai, Tsuneo Jozen, Tatsuro Miura, Junji Nishida, Ryuichi Yoshida, Kaori Ota, Ismail Arai, “Research and development on layered cloud computing for collection and analysis of vehicle sensor data,” IEICE Tech. Rep., Vol.117, No.299, IA2017-40, p.47, Thailand, November, 2017.
- 松田 裕貴, 新井 イスマイル, 荒川 豊, 安本 慶一, “スマートフォン搭載照度センサの個体差に対応した夜道における街灯照度推定値校正手法の提案,” 情報処理学会論文誌, Vol.57, No.2, pp.520--531, 2016年2月. [IPSJ DL]