修士/博士論文

車載ネットワークにおける遅延時間の
高時間分解能観測に基づく送信元識別手法

インターネットに接続する自動車が増加し,自動車内の車載ネットワークであるController Area Network (CAN)へのサイバー攻撃が懸念されています.CANは自動車内部のコンピュータであるElectronic Control Unit (ECU)間の通信に使用される車載ネットワークプロトコルであり,そのCANのデータフォーマットには送信元を識別するIDや認証する仕組みがありません.したがって,正当なECUから送信されたメッセージと攻撃者から送信された不正なメッセージを区別することができません.そこで,近年ではECUの物理的な特徴量に基づいて送信元を識別する手法が研究されています.

研究課題

既存研究では,安価な計測デバイスを用いて,CANトランシーバの遅延時間を観測し,送信元の識別を行う手法が提案されていますが,各ECUの遅延時間の差が計測デバイスの時間分解能より低い場合,送信元を正しく分類できませんでした.そこで,本研究では,ECUの識別精度を向上させるため,Time-Digital Converter (TDC)を用いた遅延時間の高分解能観測に基づく送信元識別手法を提案しています.評価結果から,従来手法では研究室内のCANのプロトタイプと実車でそれぞれ平均正解率は81.43%と76.75%であるのに対し,提案手法では99.67%と95.94%となり,提案手法の有効性を示すことができました.

提案手法の概要
実装したプロトタイプIDSと実験の様子

研究業績

  • 大平 修慈, Kibrom Araya Desta, 新井 イスマイル, 藤川 和利, "TDCによる遅延時間の高時間分解能観測に基づくCANメッセージの送信元識別手法," 研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC), 情報処理学会, vol.2019-CSEC-87, no.12, pp1-8, 2019年12月.